@jyane

マンションはできるだけ与信を使って高額なものを買ったほうが良いは本当か

2022年11月23日更新。少しづつ加筆修正しています。

背景

家探しをしようと思い、インターネットを見ているとサラリーマンは与信を最大限に使って資産性の高いマンションを購入した方が良い、世帯年収の8倍まではローンが組めるのでそうしよう、といった意見を目にします。 特に SNS 上ではマンション買い煽りと思われる発言まで見受けられます。

最大とは言わなくとも出来るだけ高額なローンを組んだ方が良いという意見はよく見ます。これは本当でしょうか。ここでは 10 年前に安い物件を買い、高い物件とのローンの毎月の支払差額を日経平均株価に投資した場合、現在の資産状況がどうなっているかをシミュレーションしてみます。

なぜ日経平均株価に投資するのかは後で解説します。

結論から言えば「ローンを最大限使って高額物件を買え」はある程度おおげさ、もしくは不動産しか見ていない意見です。なんだったら余ったお金を別の投資に回したほうがトータルプラスまであります。

マンション価格の高騰について

近年、住宅価格は高騰しておりその原因について色々な意見がありますが、端的にいえばマンション価格が高騰しているのはその価格でも売れるからです。まともに考えればこれ意外に理由がないことはすぐにわかります。売れなくてもめちゃくちゃ高い値段に設定される世界線も確かにあるかもしれませんが……

ではなぜ高騰していてもなお売れるのでしょうか。単に購入者に高騰した価格のマンションを購入する力があるからと考えるのが自然です。 一般にマンション価格は、低金利政策と日経平均株価に大きな関連があると言われています。 住宅ローンが低金利で組むことができ、日経平均株価も上昇し好景気になっていると考えればマンション価格が上昇するのは当たり前のように思えます。(諸説あります)

この論理展開は私の主観もありますが、少し調べれば大きく間違った意見ではないことはわかってもらえるかと思います。

実際にシミュレーションしてみる

10 年前に安い物件か高い物件を買い、そのローンの毎月の支払差額を日経平均株価に投資した場合、現在の資産状況がどうなっているかをシミュレーションしてみます。 日経平均株価を使う理由は、上記のようにマンション価格の上昇は日経平均株価や政策金利の影響が強いためです。 マンションの価格が上がっているのに、日本の経済状況を示す指標の調子が悪いということは考えづらく、マンションを投資として見た場合にレバレッジをかけてまで全力投資する価値があるのかを検証します。

ここでは資産性の高いマンションを「新築で購入し 10 年後に売却しても新築時の価格で売れた」と定義します。よく言われている「何年も住んだけど実質タダ」パターンです。 資産性の高いマンションは一般的に価格が高い、を実現するため安いマンションは平均家賃下落率と言われる年間 1% の減価が発生するものとします。

ここでは下記のパターン 1. 2. を考えてみます。

  1. 2012年マンション購入、購入価格 6,000 万円、現在評価額 6,000 万円
  2. 2012年マンション購入、購入価格 4,000 万円、平均的な年間家賃下落率と言われる 1% の減価が発生したものとし現在の評価額は 3,617 万円

金利については適当に 1.5%、みんな大好き元利均等で計算しています。実際にはこの時代の金利はもう少し高かったのではないかと考えています。また本当なら金利は変動しますが、ここでは固定しています。借り換えもしません。

6000万円の住宅ローンを金利 1.5% で組むと毎月の返済額はおおよそ 183,710 円です、4000万円の場合は 122,473 円で、差額は 61,237 円です。

毎月 61,237 円を日経平均のインデックス投信に回したと仮定しバックテストします。 適当にインターネットで検索して出てきたシミュレータを回すと、毎月 61,237 円を日経平均に 10 年積み立てた場合、評価額はおおよそ 13,093,682 円 (積立総額 7,348,440 円、運用益 5,745,242 円) になるようです。

まとめると、

物件取得価格(万円) 物件評価額(万円) ローン残債・負債(万円) 金融資産(万円) 純資産(万円)
6,000 6,000 4,593 0 1,407
4,000 3,617 3,062 1,309 1,864

総資産としては 2. のパターン、つまり毎月の支払額に余裕を持たせたパターンの方が + になりました。計算上はマンションに住む期間が長くなれば長くなるほど(投資期間が長くなれば長くなるほど) プラスになります。

以上からマンションにレバレッジを最大限かけて投資する価値は、少なくともこのシミュレーション上ではありません。

いくつかのパターン

上記のパターンの変形としていくつかのパターンを考えてみます。

積み立てた商品が S&P500 だった場合

良いシミュレータが見つからなかったので直近 10 年の平均リターン 14.7 % で計算しました。

物件取得価格(万円) 物件評価額(万円) ローン残債・負債(万円) 金融資産(万円) 純資産(万円)
6,000 6,000 4,593 0 1,407
4,000 3,617 3,062 (SP500)1,654 2,209

20年だった場合

20 年経っても新築時の価格で売れるシミュレーションです。日経平均は2001年からの積み立てになります。

物件取得価格(万円) 物件評価額(万円) ローン残債・負債(万円) 金融資産(万円) 純資産(万円)
6,000 6,000 2,959 0 3,041
4,000 3,271 1,973 3,082 4,380

想定される話、ディスクレイマー

  • 計算が怪しい
    • 素人ですのである程度誤差はあると思いますが、大筋は正しいと思っています。確かに運用手数料などは考えていませんが、同時に修繕積立金や管理費も考えていません。税金については考慮していません。普通に計算が間違っている場合は指摘してもらえれば嬉しいです。
  • 資産性の高い物件はなんだったら新築時以上の価格で売れますけど?
    • 対応する物件は年間下落平均 1% とかなり安定的な値を想定しています。6000 万円の物件が +10 % などで売れると想定した場合 4000 万円の物件が 1% 下落するというシミュレーションはかなり恣意的です。何も資産性の低いマンションと比較しているわけではなく、あくまでいくらのものを買うかの話です。
  • マンションは投資じゃないです。投資は危険です。
    • その場合ローンを最大化する理由はありません。マンションを投資のつもりで与信最大で買うということはお金を借りることでレバレッジをかけ、そこに全力で投資することと変わりません。
  • 日経平均はリスク高、不動産はリスク低
    • はい。しかしながらどちらか一方が価格上昇し続けるということも考えにくいです。その場合マンション価格と日経平均価格の関係および政策金利との関係を否定する必要があります。
  • 駅チカタワマンの生活の質は~
    • はい

まとめ

サラリーマンは与信を最大限使って住宅ローンを組んだ方が良い!というのはある程度大げさです。 生活の質などを考えると何を重視するかは人それぞれですので、これが正解というものはありません。ですが、必ずしも買えるだけ買えが常に正解ではないことはあきらかです。

付録

計算に使ったサイト

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